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読書記録2018~去年アップし損ねてたやつ~

去年はいっぱい本読んだぞ!!

丁度一年前にアップしようとして時期逃して嫌になってた記事を、今更上げます。本の面白さは不変だから許して。

というわけで、オススメ書籍が多い。うるさい。長い。暇な人はどうぞお付き合いください。

 

*「100万ポンド紙幣」マーク・トウェイン

「トム・ソーヤの冒険」で有名なマーク・トウェイン。史上初のアメリカ人作家と言われている人です。アメリカ文学も「緋文字」とか「グレイト・ギャツビー」とか好きなんですけど、なかなか触れる機会が少なかったので、これを機にマーク・トウェインくらい履修しようと読みました。「緋文字」は切なく狂おしい不倫ものなのでいい文学。

私が読んだやつは児童書の短編集だったので、気が楽でした。

オチがよくわからないものがいくつかあったんですけど、それ以上にめちゃくちゃ面白いものも数編。

表題作の「100万ポンド紙幣」と「彼は死んでいるのか、生きているのか?」がかなりよかった。

前者は、突然100万ポンド紙幣を手に入れて、周りから資産家だと思われてしまった男の人。身なりはボロボロなのに、会計のときに100万ポンド紙幣をすっと差し出してくるので、どこのお店の人も「これは太客だ……! 常連になってもらう価値のある人だ!」ということで、「今回はお代は結構です!」と言ってくれるんですよね。男の人がどこまで100万ポンド紙幣で世渡りしていくのか、見ものでした。

後者は、貧しいけれど幸せな共同生活をしていた、4人の画家の話。楽しく暮らしていましたが、絵はとんと売れず、いよいよ生活が立ち行かなくなります。そこで1人の画家が、一計を案じる。「この中の誰かが、死ななければならない」。彼らの計画の最終的な行く末は刺激的でした。

短編なので、劇的な上がり下がりはないけど、マーク・トウェインらしい、ちょっと毒の含まれた設定が可愛くて愉快。

ゆるゆるっと物語読みたい人にはオススメ。

 

*「プロパガンダ・ゲーム」根元聡一郎

広告会社の採用最終選考で、「政府側とレジスタンス側に分かれて、便宜上の『国民投票』による戦争の賛成反対を扇動するゲーム」をさせられることになった就活生たちの話。小説の大部分はこのゲームの様子、投票の決着を見守る。

このゲームのルールがとにかく面白い!

仮想SNSや情報素材、広報宣伝などを上手く使いながら、市民の意見を扇動していくゲームなんだけど、政府とレジスタンスそれぞれのチームに1人だけスパイもいる。人狼ゲームにプラスアルファの要素が付いたようなゲーム

小説としても、登場人物たちの広報合戦のやり方、情報やカードの切り方が、めちゃくちゃ面白い。ここでこうするかー! この手札切るのかー! 今このタイミングでこの雰囲気はまずい…! といった感じで、かなりハラハラドキドキして、純粋に行末が気になる。

スパイもかなり上手く機能するので、本当にドラマチックで刺激的。登場人物たちもかなり良いキャラしてる奴ばかり。

選考が終わった後も、小さいけれど二転三転する展開が待っていたので、最後まで飽きなかった。

下手なミステリーより興味深く、三流のバトルものより手に汗握った。この数年で個人的に一番のヒット作。

これ絶対実写化しても面白いやつだ…!小説読まない層にもこの面白い作品知ってほしいから、映画化とかして欲しい……。

実写化を楽しみだと思う作品は生まれて初めてかもしれない。

駆け引き、騙し合い、はらはらドキドキのシーソーゲームが好きな人にはオススメ。

 

*「メサイア」高殿円

さすがベストセラー作家高殿先生……! 完成度高すぎる作品だった。

近未来スパイもの。ほぼ現代と変わらない世界観、時代感、倫理観なので、特別困ることもない。

キャラは複雑な生い立ちの子ばかり、スパイという非日常な仕事環境。しかし世界観はシンプルなので、キャラの心情や任務(物語の主軸になる、事件や敵とのやり取り)を追うことに集中できる。

ちょっと名称や用語が難しいところもあるけど、ある程度は作中の流れで多分こういう内容であろう、というのは察しがつくので大丈夫。しかも重要ワードに関しては頻繁に出してくれるので(「鉄の掟」とか)、あーはいはいさっき説明してくれたあれのことね、って徐々にならされていく。ファンタジーやSF読める人には普通におすすめ!

「共依存やメリバっぽい雰囲気好きな人に是非」みたいなプレゼンをよくお見かけしたので、べたべたどろどろのブロマンス耽美っぽいキャラ関係かと警戒してたんですけど、全然そんなことない。

普通の男の子たちが紆余曲折あってスパイしてる話。相棒を特別だと思ってないし口にしてもないけど、自分が期待していい唯一の繋がりが相棒=北極星みたいな存在。って感じだった。

下地であるスパイ(サクラ)や養成学校(チャーチ)、それらの存在が日本政府や警察省でどう扱われているかって設定がめちゃくちゃしっかりしているので、すごく読みごたえがあった。 権謀術数渦巻く政界模様好きな人には超おすすめ(私のことですね)

あと、相棒のことを「メサイア」っていうんですけど、「救世主」の英語なんですよね(ヘブライ語の「メシア」の方が、セーラームーン世代には馴染みがある) タイトルかつ相棒の呼び名の通り、ストーリー的にも「救いがあるか」「誰を救うのか」がテーマになっててトリプルミーニングでめちゃくちゃ面白い。

「メリバっぽい雰囲気好きな人〜」ってプレゼンよくお見かけしたから、ストーリーは色々と覚悟してたんですけど、普通に事件の盛り上がりはあるし、だいたいみんな人生目標的なところでは「救い」があるし、何より主人公の鋭利くんにも「救い」があったのがすごいよかった。

「戸籍も過去も消去された代わりに殺人権を持つスパイ」なので、帰る場所や頼れる人をほぼ持たない主人公たちは、その生い立ちや現状ゆえに普通の幸せは望めないかもしれないけど、抱えていたわだかまりを解消できたり、「救世主」という希望を持って生きていられるEDはすごくグッとくるものがあった

ちょっと由哉くんに対して鋭利くん淡白じゃない!?とは思ったんだけど、自分の名前を明かしてあげたことが、鋭利くん最大の親愛表現だなと思ったら、すごく愛おしくなった(「ゴミも悪くないよ、牛尾」) ……。真面目で不器用で射撃の得意な主人公、とても愛せる可愛げがある。

良質なSFないかなと思ってる人にはオススメです。

 

*「ブロード街の12日間」デボラ・ホプキンソン

実際にイギリスで起きた、コレラの感染事件を基にした小説。両親を亡くし、生活に困りながら暮らす少年が、弟や街の知人たちを守るために、戦う話。突然街で広がった死と病気について、詳しいドクターの手足となって奔走します。

今でこそ、感染症、それも街の一画での感染となれば、水か動物か? って思いますけど、これって先駆者たちの研究・記録、学校での勉強や周知広報のたまものなんですよね。

平安時代とかは風邪も物の怪の仕業とされてましたよね。イギリスでもご多聞にもれず、結核も体調不良も全部、悪魔か悪い血のせいとされてました(汚れた悪い血が体内にあるせいと信じられていたので、「瀉血」といって、弱ってる人間から更に血を抜くような治療法が取られることもあった)

割と序盤から、「これ絶対水のせいだよ~! 今すぐその井戸の水飲むのやめな~!」って思う描写は多いんですけど、「原因が水だとわかること」「水道の水以外の飲料に切り替えられること」は、我々が現代の人間だからできることなのだ……。

私たちからすれば自明の理、簡単に取れるはず対策が取れず、主人公の知り合いたちが次々に倒れ、死に至り、弟や友人たちを死なせたくないと半泣きで駆けずり回る主人公に、心が痛む……。

史実ではなく、小説形式なので、主人公はピンチを乗り越えて、ちゃんと報われたりご褒美をもらえたりします。事件による悲劇の記録だけではないので、読む人間に対して安心な設計。

私たちが幼少期から受けた教育や、先人たちが苦労と犠牲の果てに解明した真実の記録が残されていることのありがたさを、改めて実感しました。興味深いし、主人公のがんばりが報われてよかった。

よく話題になるけど、wikipediaの「地方病」とかを興味深く読める人には、オススメです。

 

*「シャーロック・ホームズの栄冠」

FGO帯をつけるコラボをやってた、創元社ミステリ文庫さんのやつ。私はシャーロキアンではないんですけど、宗教上の理由でFGOのホームズにだけは心酔しているので、買ってみました。

シャーロック・ホームズは、グラナダ版のドラマと、「冒険」の文庫をかじったくらいです。なので、本編をふんわりとだけ履修してる感じ。あんまり覚えてないけど……ちゃんと事件と顛末を覚えてるの「赤毛連盟」くらいだな……(ミステリに弱い脳みそ)

この「栄冠」はパスティーシュばかりを集めたもの。パスティーシュっていうのは、プロの作家さんたちが、オマージュや行間・幕間の妄想を描いた、「公然とした二次創作」みたいなもんです。それらばかり集めてくれてるので、いわゆる「商業アンソロ」ってことですね!

今まで和訳されていなかったものばかり集めてくださってる文庫なので、日本のシャーロキアン的にも新鮮なものばかりらしい。がっつり長編本格ミステリ一本!ではないから、私でも読めた。

しょっぱな一本目、列車内での事件が面白かった! 途中、モリアーティ教授にまつわる短編もあったりするので、教授推しの方も是非。

あと、日本語訳が易しくて読みやすい!

私の手元にある「冒険」はちょっと訳が古くて読みづらいやつなので、創元社ミステリ文庫さんで買い直そうかな……、と思いました。

海外古典はこれが一番ネックなんだよね! 翻訳が読みづらい!

でもビジネス的には、訳を改めて新版を出したところで売上につながるのか……とハードルが高くて、おいそれとは新版が出せないのもわかる。完売した同人誌、加筆修正して再販しても売れないだろう問題と一緒。

カンバーバッジさんの『シャーロック』とかのお蔭で、ホームズ原典気になってる若い人もいっぱいいそうだし、新訳出すならそろそろだと思うよ出版社の皆さん!

 

*「次回作にご期待ください」問乃みさき

全オタク、特に雑誌を買い続けて好きな漫画を応援したことがある奴は全員これを読んで泣け。

本屋で平積みされてて、新人賞大賞受賞!ってでかでかと書かれてて、正直マジで???ってなったんですよね。もう散々言われてるけど、小説も漫画も新人賞で「大賞は受賞作なし(文句なしぶっちぎりの傑作はなし。特賞とかは受賞作あるよ)」みたいなのめちゃくちゃ多いから、大賞受賞作って相当すごいんですよね。

で、あらすじ見たら、主人公が漫画の編集者なんですよ。

あ~、これは……と思ったよね、正直。

だって選考してるの、編集者か有名作家でしょ? どんなストーリーであれ、絶対感情移入するじゃんこんなの。自分の身に照らし合わせた欲目絶対入ってないって言い切れないでしょ。

って思ってたんだよね、読むまではね!

もう号泣。

顔べっちょべちょ。実家帰る高速バスの中で読んでたのに、おいおい泣いた(迷惑)

こんなん、小説漫画、エンタメ作品を愛する全ての人間泣いてしまう。

クリエイターに対してまっとうな(最低限の)敬意を持って、いちファンとして何かを愛したことがある人間は絶対に泣いてしまう。

「次回作にご期待ください」って、ネット用語では打ち切り作品とかオチのない話を揶揄するときに使われるけど、この言葉の重みを知れと突き付けられたような衝撃がある。

タイトルの伏線回収驚異的。全オタクよむせび泣けって感じの作品だった。よかった。

 

一個残念だったのは、表題の「次回作にご期待ください」以外にもう一本入ってたこと。

表題作が新人賞大賞受賞したやつなんだけど、多分一冊の本にするには字数が少なかったんだよね。文庫本の半分以上が、表題作の続編ってかたちで新しく書き下ろされた作品なんですよ。特にどこにも明記されてなかったけど、恐らく尺の都合で水増しされた話(追加された後日談)でしょ?

本当に申し訳ないんだけど、この書き下ろしは蛇足すぎた。(個人の感想です)

表題作の傑作一本では、単行本としては短すぎるというビジネス的な問題なのはわかるんだけどさあ~~~、正直続編要らんかった。

表題作だけで、主人公の成長って描かれてるんだよね! 編集者としての経験やキャリアから積み上げてきた知識以外に新しい発見をして、更によい編集者になりました! というのは既に完璧な傑作の中で描かれて、ある程度完成された人物像に到達したんだよ。

それなのに続編でまた悩んで迷って足止め食ってるのは、読者的には「今!!今色々乗り越えたとこじゃん!!また振り出し???」ってなってしまった……。

続編全体の題材はいい、めちゃくちゃいい。ミレニアル世代の新人デジタル絵師に今までの大御所アナログ漫画家たちへの対応が通用しないの面白すぎる……編集者も絵描きたちと同程度の描画技術知識がないと話がかみ合わないのか、それとも若い子の感性についていけてないのかみたいなテーマとても面白い……。

こないだ「最近の若い子Excelの表に線引かない」問題で、「最新のやり方では線引かないんだよ」と話題になってたけど、まさにこうやって新しい知識技術やり方は勉強しないと、いつの日か私たちは自分が馬鹿にしていた「流行りの曲知らないおっさん(おばさん)」になってしまうのだ……怖い。

しかしいかんせん、表題作が傑作すぎた。ある一定レベルの完成された編集者になった主人公に、また似たようなことでつまづいてほしくなかった……。

せめて二巻でやってくれたら、「今回はこんなテーマなんだな!」ってなるんだろうけど、同じ本に収録されてると間髪入れずにまた主人公がつまづいてて、もういいじゃんさっき大団円迎えたじゃんまた違う(似たような)問題抱えてんの? そうだね、人生ってままならないね……という謎の虚無感があった。

傑作は傑作なんだから、ページ数足りなくて薄い単行本になってもいいから、表題作だけで売り出せばよかったのに。

商業では馴染みがないのかもしれないけど、同人界隈のありがたいお言葉を聞け。「薄くても本が出れば神本」

もしくは開き直って、全然違う話をもう一本作者さんに書いてもらって、傑作が二本読めちゃうお得!にすればよかったのではないか?

いやでも表題作はマジで傑作なので本当にオススメです。

 

 

近いうちに2019年の読書記録も残したいんですけど、2019年は本より映画を観てたので、映画の感想一覧にするかもしれない。

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