血界戦線はすごい作品ですね。
ここまで「読者への説明」を省いた作品を見たことが無かったので、驚きました。
まずそもそも、アニメの1話が公開された時(ニコニコの公式配信で見ました)、私は視聴脱落したんです。
世界観設定は好み、バトルの異能力設定も好み、キャラも好みっぽいので見たんですが、1話終了して首を傾げてドロップアウト。
どうもテンポが合わない。
演出の問題なのか、台詞の掛け合いの問題なのか、とにかく私の中のエンターテイメントを見る時のリズムと合わなかったんです。
説明するのが難しいんですが、例えば人と話をしていて、「この話をしたらこう食いついてくれて話広がらないかな」と予想しているのと、違う食いつき方をされるような。
キャッチボールしてたらいきなり明後日の方向にボール投げられるみたいな。
そんな違和感があって、かなり好みなのに視聴をやめてたんですね。
それなのにね、twitterしてたらフォロワーさんがすごい盛り上がってたりするじゃん?
何か素敵なイラストとか妄想とか流れてきたりするじゃん?
アニメも終わってちょっと経つのに、そわそわ気になり始めるじゃん?
気づいたらアニメ全話追いかけてたわ!!
kindleで漫画も買って読んだわ!!
まとめ買いしたらちょっとお安いんだもの買うしかない。
結果面白かったわ!!!!
そして見てるうちに、私がドロップアウトした「リズムの違和感」の原因を理解しました。
この作品、「視聴者への説明」を省く傾向にある。
どういうエンタメでもすべからく、物語は「読者に説明」をするんです。
SFやファンタジーだと、ここがどういう世界でどういう文明水準なのかを、映像やエピソード、時には「説明台詞」なんて言われる解説で、説明する。
青春ドラマや恋愛ものだって、登場人物の価値観やスタイル、人間模様を、色んな手法で説明する。
読者(視聴者)に設定をわかってもらわないと、読者が物語にのめり込めないから。
この辺りの塩梅が作り手にとっては実に難しいところ。
全部説明しきっちゃうと、展開が読みやすくてつまらない物語になる。
逆に説明しきらないと、読者が「後出し設定」についていけなくて、ドロップアウトする物語になる。
昔に比べて最近のエンタメは、後者を恐れているのか、読者層を広く設定しているからか、「説明過多」になっている感がある気がします。
話が逸れそうなので元に戻すと、
血界戦線はこの「読者への説明」が極力省かれている。
特にアニメ。
毎度流れるクラウスさんの「異界と現世が交わる街、ヘルサレムズ・ロット」という語りで、主人公の属している組織と、危うげな均衡で成り立っている街のことは予測がつくけど、ぶっちゃけマジでそれしかわからない。
どうしてこの街の平和を守らんとするライブラが組織されているのかは不明な上に誰も言及しない(主人公や街の人が疑問に思う描写もない)ので、「発足理由は秘匿されているのかどうか」という説明すら無い始末。
何かの背景や世界観に関しては、物語の序盤では隠しておくというのはよくあるパターンだから、それは一度置いておいてもいい。
でも、血界戦線は、マジで本当に「読者への説明」が無い(大事なことなのでry)
例えばKKの初登場シーン。
- ライブラという組織に入った主人公レオは、まだ入って日が浅いので、元々「全貌がわからない」と噂のライブラの実情を全然知らない。
- そんなレオたちが感知しないところで、組織のリーダーであるクラウスが秘密裏に動いて、結構大きな事件を収束させるというエピソードで、ライブラの一員であるKKが初登場。
- これも秘密裏にクラウスが迎えに行くので、レオはこのエピソード段階では、KKには会ったことがない。
しかし、この描写がすごい。
普通の少年漫画なら、
- ライブラメンバーが集まっているところで、クラウスが「KKを迎えに行ってくる」と言うなどして、「KKという人物がライブラにはいるんですよ」ということを読者に説明する。
- 会ったことのないレオ(読者の代理)が「KKさんってどんな人ですか?」と聞くなどして、KKの存在を掘り下げて読者に説明する。(ここで説明があっても良し、誰かが「会えばわかるさ」と言うなどして秘匿するも良し)
- KKが1人で大立ち回りをしているシーンを入れるなどして、KKの戦闘スタイル、異能力等を読者に説明する。(KKは唯一の既婚者子持ちで、戦時下でも幼い子を守ろうとする描写は他でもあったので、ここの戦闘にそれを組み込んで、それを説明しても良い)
- クラウスが迎えに来る
という流れが一般的なはず。
この1~3をすっ飛ばして、
いきなり4のシーンから始めるのが、血界戦線である。
アニメでクラウスが突然車から降りてきて、「やあKK」と挨拶を始めるシーンを見て、私は
- こいつは敵か味方か?
- ライブラメンバーなのか、それともクラウスが個人的に会いに来た相手か?
- 戦闘要員なのか、チェインのように諜報員なのか?
- ザップのような度し難い人間の屑(原文ママ)なのか、レオのような超絶真面目お人よしなのか?
と、大混乱でした。
恐らく私の感じたリズムの合わない違和感はここにあるんですよね。
昨今の懇切丁寧な「読者への説明」描写に慣れきっている私は、説明を極力省いてくる血界戦線の「説明」が足りなくて、混乱してしまったんです。
説明を削ると、作り手はストーリー構成に注力できるので、ストーリーがさくさく進みます。
1つの話にエピソード盛りだくさんな気がするのに、綺麗に終わるのは、説明描写を削いでるからでしょう。
この「読者への説明」が無いっていうのは、逆に言うと
「読者の想像の余地」があるってことです。
- ライブラが発足された理由は?
- みんなの異能力にまつわる過去のエピソードは?
- どうしてみんなライブラに加入したの?
- KKが子供がいてもこの仕事を辞めない理由は?
などなど、読者が想像しても尽きない余地がたくさん残されています。
だからこそ続きが気になるし、魅力的なんだろうなと思いました。
アニメは原作漫画よりも「説明」描写を削ってるので、漫画よりも謎が残りまくりで進みます。
想像力を働かせて、シーンとシーンの幕間を楽しむことが出来る人は、本当にワクワクする作品だと思う!
漫画は漫画で各人の魅力溢れるエピソードが盛りだくさんだし、アニメはオリジナル要素入れて綺麗に原作の雰囲気まとめてるので、どちらもおススメです。
ちなみに黒河はスティーブンさん推しでKKさん大好きなので、2人がコンビで動いてるのがしぬほど好きです。
KKさんがスティーブンさんと組まされて、「まーた、あなたと2人ぃ?!」ってぼやいてるシーン大好きです。
これ、KKさんが既婚者・二児の母であることと、本来は遠距離戦闘員であることを考慮して、冷静に危機管理ができて接近戦闘員であるスティーブンと組むことをクラウスかスティーブンが提案しているのかと思うと、ライブラのファミリー愛ものすごい胸に響きます。
ヤクザとかマフィアみたいなもんだもんな、ライブラ。